予告は凄く面白そうだったのに
残念
2023/02/23
モデル・人気インフルエンサーのヤヤと、男性モデルカールのカップルは、招待を受け豪華客船クルーズの旅に。リッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでも叶える客室乗務員が笑顔を振りまくゴージャスな世界。しかしある夜、船が難破。そのまま海賊に襲われ、彼らは無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態で、ヒエラルキーの頂点に立ったのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃婦だった――。
チャールビ・ディーン / ハリス・ディキンソン / ウッディ・ハレルソン / ドリー・デ・レオン / ズラッコ・ブリッチ / イリス・ベルベン / ジャン＝クリストフ・フォリー / アマンダ・ウォーカー / オリバー・フォード・デイビス / ズニー・メレス
Fredrik Wenzel (C) Plattform Produktion
予告は凄く面白そうだったのに
残念
この感想にはネタバレが含まれています！
ネタバレフィルター解除傲慢な金持ち客ばかりの豪華客船が色々あって難破して幾人かが無人島に流れ着くも、そこには水も食料もない。しかしトイレ清掃員のおばちゃんにはそれらを得られるサバイバルスキルがあった。
かくしてヒエラルキーの頂点と底辺が逆転する――。
ストーリーをざっくりと説明するとこうなります。
しかし単なるざまぁ系のように単純明快にカタルシスを得られるお話ではなく非常に悪趣味で露悪的な作品。
登場人物全員一癖も二癖もある奴ばかりでまともな善人は皆無。
冒頭からして虚飾に満ちたファッション業界を皮肉り、男性モデルのギャラは女性モデルの1/3なのにレストランで支払うのは男なのはうんたらかんたらと、社会が掲げる平等の嘘っぱちや、格差の理不尽さを冷笑している。
そう、冷笑なんですよ。全体から伝わってくるのは。
この物語からは真面目に社会が平等か否かとか構造的な経済格差などについて真摯に考えているようには思えない、スウェーデンの勝ち組白人という監督の出自を知るとなおさらそう思う。
なんかねぇ、搾取構造を反省するような言動と素振りだけのスタイルだけ見せて、実際は自分達はその特権から降りようとしない恵まれた映画人、賞を選ぶ人たちにはうけが良さそう。
これを本当に底辺からのし上がった監督が撮ったらまったく別の作品になったでしょうね。
この物語の舞台に薬師寺涼子や竜堂四兄弟と適当な怪物をぶち込んで全盛期の田中芳樹がお話を書いたら面白いだろうなぁ。
滲み出る作家性が合わなかっただけで、船内の場面などお話そのものは楽しめました。
船酔いと食あたりのダブルパンチで乗客みんなうんことゲロまみれになるなかヘヴィメタルみたいな曲が流れるところとか、好きな人はニコニコしてしまうのではないでしょうか。
あと出てくる金持ち連中のいやらしさ、ナチュラルにマウント取ってくる感じのイヤ〜な描写などは「いやな金持ち」を書くにあたって参考になることでしょう。
なろう系クズ貴族しか書けない物書きのみなさんは勉強になりますよ。