生まれつき耳の聴こえない女性ボクサー、ケイコのお話。
「耳が聞こえないのは致命的だ。レフェリーの声もゴングの音もセコンドの指示も聞こえない」ジムの会長はそう言う。
だからケイコは相手を凝視し、どこからパンチが繰り出され、いつ隙ができるかを寸分も見逃さないように〝目を澄ませて〟戦う。
そんなケイコを演じる岸井ゆきのの目つき、表情が良い。獲物を狙う猛禽類を思わせ、その鋭い眼光に魅せられた。
音のない世界に生きる主人公とは逆に映画は音を印象的に使っている。
トレーニング機器のきしむ音、ミットやサンドバッグを叩く音、縄跳びの音、橋を渡る電車の音、下町の喧騒――。
ケイコが生み出す、ケイコを包む世界の音が耳に残る。
そして16ミリフィルムで撮られた画面も印象的で、デジタルとは異なるざらついた映像も目に残る。
目と耳の双方に訴えかけてくる作品。
なによりも岸井ゆきのの演技、この映画のために仕上げたであろうしなやかな肢体と身のこなしが素晴らしい。わりと最近にこの女優の存在を知ったのだが今まで注目しなかったのが惜しい。もっと前から知っていれば『やがで海へと届く』や『神は見返りを求める』などをスクリーンで観られたものを……。
みんなの感想
忠行


生まれつき耳の聴こえない女性ボクサー、ケイコのお話。
「耳が聞こえないのは致命的だ。レフェリーの声もゴングの音もセコンドの指示も聞こえない」ジムの会長はそう言う。
だからケイコは相手を凝視し、どこからパンチが繰り出され、いつ隙ができるかを寸分も見逃さないように〝目を澄ませて〟戦う。
そんなケイコを演じる岸井ゆきのの目つき、表情が良い。獲物を狙う猛禽類を思わせ、その鋭い眼光に魅せられた。
音のない世界に生きる主人公とは逆に映画は音を印象的に使っている。
トレーニング機器のきしむ音、ミットやサンドバッグを叩く音、縄跳びの音、橋を渡る電車の音、下町の喧騒――。
ケイコが生み出す、ケイコを包む世界の音が耳に残る。
そして16ミリフィルムで撮られた画面も印象的で、デジタルとは異なるざらついた映像も目に残る。
目と耳の双方に訴えかけてくる作品。
なによりも岸井ゆきのの演技、この映画のために仕上げたであろうしなやかな肢体と身のこなしが素晴らしい。わりと最近にこの女優の存在を知ったのだが今まで注目しなかったのが惜しい。もっと前から知っていれば『やがで海へと届く』や『神は見返りを求める』などをスクリーンで観られたものを……。